毎日の生活と切っても切り離せない「買い物」がゲームになった。昨年度から小中学校で実施されている「総合的な学習の時間」に助っ人として活躍してきた沖縄リサイクル運動市民の会が、その実践の成果を出版したものである。
総合的な学習の時間は、知識をつめこむのでなく、身近にある地域の素材をとりあげ、生きる力、社会の変化に主体的に対応し、よりよく問題を解決する資質や能力を育むことをねらいとしている。環境をテーマにした学習教材は、自然とのふれあいを通して感性を育てる、というタイプが多い中で、「買い物ゲーム」はユニークな存在だといえよう。
子どもたち(に限らないが)は、買い物が大好きである。模擬店に並べられた本物、あるいはそっくり商品や、節約できた金額を競うという趣向が子どもたちの遊び心をくすぐる。それも単なる節約ではなく、過剰包装やごみ処理にかかる費用について考えさせるところにポイントがある。一度、教室でこの「買い物ゲーム」を見学させてもらったことがあるが、子どもたちは、実に生き生きと動き回り、しっかり問題点に気付いてくれた。のべ80回、2800人の子どもたちが参加したという実績が生かされているのである。
あらためて本書に目を通して感じたのは、編著者のやさしさ、細やかな心遣いである。ここまで、と思うほど丁寧にゲームの進め方が解説され、発言しない子どもや家庭事情への配慮も行き届いている。子どもたちのコメントやエピソードも面白く、ハッとさせられる発言もある。
一見便利で豊かな私たちの生活だが、買い物ゲームを通して子どもたちはその素直な感性で、ごみ問題、資源問題を考え、これでいいのかと真剣に心配する。子どもたちの将来にツケを回さないために、誰でもができる行動―それが環境に配慮した買い物である。本書は、学校の先生だけでなく、政治家や市民運動に関心のある方々をはじめ、多くの人に読んでもらいたい、いや実践していただきたい内容である。
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