新聞古紙回収袋をめぐる
新聞社と那覇市の戦い!

  那覇市のごみ5種分別では、資源回収として新聞、チラシなどの上質紙、雑誌、ダンボール等古紙を回収している。最近、紙の回収日に那覇市のあちらこちらで収集から取り残されている古紙の束を見かけるようになった。

それらのほとんどは新聞社が配布している紙袋に入った古紙の束だ。この取り残された古紙の束には「この紙は収集できません。袋には入れないで、ヒモで十字にしばって出してください。」と印刷されたステッカーが貼られている。

 確かに那覇市は5種分別に切り替えた当初から、「古紙はヒモでしばって出して下さい。」と広報していたが、今まではヒモでしばられていない古紙をステッカーを貼って取り残すまでの徹底してはこなかった。それが、どうして今、この様に強行するに至ったかを今回取材してみることにした。

取り残しを始めた理由

   まず、那覇市の環境業務課を訪ね、実際に回収業務を行っている現場職員古波蔵さんに現状を聞いてみた。
 なぜヒモでしばられていない古紙を取り残すようになったかの質問に「それは、こちらの事情ではなく、古紙回収業者(県内で回収した古紙を、まとめて本土の製紙工場などに出荷する業者)が選別する際、紙袋に入った古紙の中から出る異物が多いので、中身が見えない紙袋は引き取れないという話になったことが発端。」との答えが返ってきた。


 古紙回収業者では那覇市が収集した古紙を引き取り、選別しているが、紙袋入りの古紙の間から使用済みの紙おむつやちり紙、残飯、動物の死骸まで出てくることがあるという。それらを手作業で取り除き、選別している古紙回収業者の苦労は並みのものではない。那覇市としては引き取れない古紙回収業者の状況を察して、取り残す事を始めたという。

回収現場の地道な努力

 実際、ステッカーを貼って取り残し始めたのは、今年の1月からなので、約2ヶ月が過ぎた。その間、那覇市環境業務課やリサイクルプラザには、苦情や問い合わせが何件も入ったという。

 「何で回収しないんですか!」「紙袋に入っていても、うちはきちんと分別してあるのに」と、様々な市民の声に対応するのも一苦労。そもそも広報不足なことも、市民の理解を得られにくい理由のようだ。


 現場での取り残しの数をたずねると、「一日収集車一台につき30枚くらいステッカーを使っている。一カ所に幾つもある場合は、目立つ所に一枚だけ貼る。このステッカーは手作りだけど、1枚5円するから。」と、ステッカーを手渡してくれた。

 手元の3枚のステッカーをよく見ると、外枠の切り口が所々ギザギザし、印刷も微妙にずれている。思わず「これ、手で切っているんですか?」と聞いてしまったら「そう、自分たちで手作りしている」と照れくさそうに答えてくれた。

 街角で取り残しを見かけた時には気付かなかったが、数枚手のひらに並べて見ると、ステッカーが全くの手作りだという事が良くわかった。回収作業の合間に手作りしたのであろう。

 ちなみに5種分別を始めた頃に印刷屋に頼んだステッカーは、サイズも大きくて一枚25円したそうだ。今回は白紙のシールシートを購入して自分たちで印刷し、急遽手作りしたらしい。こういった物を手作りした経験のある方ならご存知だと思うが、結構手間暇かかるものだ。街角で取り残しされた古紙に貼られているステッカーに注目を。これを貼っていくことで市民に知らせていこうとする現場職員の心意気が見られるものである。

集める根気と、出す側の気配り

 取り残しされた古紙は、そのまま置かれて後日、可燃ゴミと一緒に収集されている。
本来ならば、リサイクルすべく各家庭で保管され、束ねられて出された古紙が、袋に入っていたために、燃えて灰になってしまうのである。あー何とか早くみんなに古紙は袋に入れて出さないように知らせたいものだ。


 業務課の職員は、「門口回収(各家の門前での戸別回収のこと。那覇市の一部で行われている。)は、出し方が良くなっている。やはり、出所がわかるので改善されやすいです。

 県営や市営の団地、アパート・マンションなどの集合住宅がとても難しい。何度もステッカーを貼って取り残していくことの繰り返しで、根気よく伝えていきたい」とのこと。

 その他、市民へのお願いとして、新聞紙とチラシは分けなくても良いので、混ぜてヒモでしばって出すことと、菓子箱などのボール紙のパッケージは現在、古紙回収業者が引き取れないので、ダンボールと混ぜて出さないようにすること。そして、雨の日は古紙は出さないで、次週にまわしてくださいということです。

紙袋入りを引き取らない理由

  次に、古紙回収業者の声を聞いてみることにした。那覇市リサイクルプラザの近くにあるふじ産業の大城さんに話をうかがった。
 「紙の袋は中に何が入っているかわからない。リサイクルの必要性がこれだけ言われていても、異物の混入状況は一向に変わらないんだよね。」と残念そうに大城さんは語る。

 しかし、紙袋の弊害は中に異物が混入するだけでなく、紙の質が違うところにも問題があるらしい。茶色の紙いわゆるクラフトと言われる紙質は、ダンボールになら再生可能だが、新聞やチラシなどの紙にとっては禁忌品だ。だから、紙袋に入って回収された古紙は全てひっくり返して袋をはずすが、異物を取り外すと同時に、クラフトの紙片が混ざらないように注意しなくてはならない。

 地元新聞社2社が出している紙袋のうち、一社はクラフトを使っている。
 しばられたヒモは、選別の際、カッターで切ってはずすが、ヒモの方は古紙の中身が見える分、精神的負担も軽い。紙袋をひっくり返して動物の死骸などが出る事への不安は、分別作業をする人にとってかなり負担になる。古紙価格低迷の状況で経費のやりくりも、手腕が必要だ。分別作業にかかる手間やコストを下げることが求められている。

紙袋を配布する新聞社の立場

 ここまで古紙を回収する側の那覇市、回収した古紙を引き取り再生ルートに乗せる回収業者の声をインタビューしてきたが、さらに踏み込んで、出している側の新聞社の声を聞くために、沖縄タイムス販売局の運天さんを訪ね、紙袋に入った古紙を那覇市が引き取らなくなったことについての対策などを聞いてみた。

 「昨年の10月に販売店から引き取られなくなる状況の声が出始めて、那覇市に問い合わせし、異物混入と紙質などの原因で紙袋を取り除く必要があるという状況が把握できた。行政や他社(新聞社)とも話し合い、検討中です。」と運天さんは話し始めた。

 しかし、1月からの取り残しを実施していく前に、行政には正式文章を要求したが、未だ新聞社には提出されていないという。

新聞社としても多くの販売店を抱える組織のため、直ぐには切り替えられない面もあるという。

 「新聞社は両社とも紙袋を扱ってきた歴史があり、紙袋によって古紙回収を推進してきた経緯もある。販売店によっては読み終えた新聞の回収が販売政策になっているところもあるので、紙袋を直ぐには中止できない。ただ、 行政には遠慮せずに正式文章を出してもらい、段取りを踏んで切り替えていきたい。」と語ってくれた。その際には、市民への広報も紙面上でぜひお願いしたいものだ。

市民はどう考える

 さて、取材を重ねるうちに、この紙袋問題は市民の意識に大きく左右されていくであろうと思うようになった。そもそも、異物混入はマナーに反する事だ。

古紙は資源として再生すべく集めている物であり、廃棄するためのものではない。市民が紙おむつあるいは動物の死骸を紙袋に入れて資源の日に出した場合、回収する人やそれを分別する人の手に触れた時に受ける嫌な気持ちを想像してみてほしい。

当会の運動の中で、「リサイクルは思いやりのリレーだ」とよく呼びかけている。回収している側や、選別している側が気持ちよく作業できる工程を、排出する市民が協力して作っていかなければと思う。

 これからは、ゴミやリサイクルに関する様々な社会的ルール作りが必要とされる。今の状況では「市民は信用できない」ということが前提となり作られてしまう。

そうしたルールはなにかと非合理的で、税金の無駄遣いにもなりかねない。自分たちの意識がルール作りに反映されることを市民一人ひとりが自覚したいものだ。それと同時に、新聞社には、この問題を真剣に考えてほしい。

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